— times

森か湖か草原の手前、雨上がり若しくは小雨が降っている朝で、テーブルの上には、朝方まで続けた宴会の残骸が残り、倒れたワイン瓶には、液体が残っていて、チーズがこびり付いたままのナイフや、吸い殻の溢れた皿がある。脇には焚き火の跡があり、小雨のなか燻って、弱い煙の筋を立ち上げている。

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家族が朝の身支度を済ませ、自宅を出払った後の食卓の片付けが、こちらに任されたまま放置され、夜通しの仕事の縁でそれを眺める時があって、食卓の、食べ残された朝食やミルクが残ったグラス、卓上にこぼれたパン屑、水滴などに、朝の家族夫々の慌てた仕草が残っていて、苦笑しながら片付けるのだが、では、こうした状態を仕組むとなると、家族ひとりひとりの目覚めから行動を追って、仕草に至った経緯を重ねないと、グラスにミルクは残らない。パン屑に、意識が乗り移り、心のトラウマを訴える暗号のような不要な意味を持つこともある。

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私は湾岸戦争以後、日本は近いうちに憲法九条を放棄して戦争に参加するだろうと予想していました。ただ、その結果痛い目にあって、戦後60年にあたる2005年にはあらためて戦後の憲法九条の意義を確認するということになるのではないか、と。そういう「自然の狡知」を考えていたのですが、実際にはそうならなかった。

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上手の役者に人の就寝前の行動を仔細に真似させたら、さぞや面白い演技が見られることだろう。こういうものに人がエロよりも興味を覚える時代がいつか来るだろうか。その際しかし、心ある役者ならば、演技の過剰をもっとも戒めるにちがいない。可笑しいと眺められるよりも先まで、つぶさに真似てはならないのだ。おそらく陰惨になる。

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所謂「埠頭」という、人の棲む環境ではない所に事務所を構え、この不思議な空間に多分慣れることはないと思うが、私にとってはこれが良い。埠頭から岬を想起、伊豆、紀伊半島から中上健次、韓国などを連想。大陸や列島から突出した風当たりの良い形態なのだったと、形態の示す意味等を巡らせ歩く。

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まだ十全に身体の機能を果たしていない女性特有の身体とココロの矛盾する境界の時期を維持する健気さも、普遍のひとつとして加えるべきだったし、あるいは疲弊の果ての投げやりも在るべきだった。つまり、健全で前向きな新陳代謝の激しい人間の活動から、ある種の静止を導こうというわけだ。これが妊婦であると眼差しは対象へ届かないし、活発な活動の運動体であると、眼差しは内向する。外へただ無防備に開かれているような眼差しを前提とし、それがつまり「机」となった。

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この「机」は、モノを書いたり食事をするための道具ではなく、俯いた視線上に存在するナニモノかであり、その為の高さと構造、ディティールを持つべきで、これは逆説として眼差しを受け止めてはいけない。井戸を覗き込むような好奇心を煽って立ち尽くさないように、静かな意識の移動を促す「机」をwater deskとした。

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