— times

ナイトテーブルの上に青い陶器の電気スタンドがのっていた。その電気スタンドの下に、ソーサーにのせられたティーカップがひとつ置かれていた。カップのふちに赤い口紅がついており、ソーサーの上に紅茶が少しこぼれていた。

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「朝のうちに書いておかないと、結局、何も書けなくなるんでね。詩だ」
「詩?あなた、詩を書くの?」
「うん」と彼は言った。プライドとあきらめががないまぜになったような言い方だった。
「うん、おれは詩を書くんだ」
「ふうん」としかあたしには言えなかった。それより陽の光から逃れたかった。

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つまり<見る>ことが、肉眼に所与のものとしてだけ自覚されている間は、まだ<見る>ことの意味はそれほど明らかなものではなかった。

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雨は三日も続いて、ようやく晴れあがった正午前にまた石垣の道に来ると、人にも見られず落花の残りが宙に舞い、石の間に浅く積もった土からとぼしい青草が萌えて、石の丸味の上に、ひとひらほどずつ、花びらが載っていた。供養のようだと眺めた。

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