— times

シンバルを叩く猿だとか、音に反応して踊る花だとか子供の頃から一切変わらない商品がディスプレイされている。色は勿論というべきだろうか、褪せていた。

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道も街路樹もマンションも車も手に持っているペットボトルも全てが赤く染められ、境界線が失っていく中で、最後まで見えていたのはちりじりに逃げて行く友達の影だった。

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 普段、私たちは多くの人に接して生きている。それが、人生の中で相手と一言二言しか会話を交わさなかったとしても記憶に残る場合もあれば、逆に何年も一緒にいても、その内時間とともに忘れ去ってしまう場合もある。これは他者に対する人間の対応の一ケースに過ぎないのだが、興味深いのは相手に対する性格や行動をより少ない情報で判断し、それにより相手との距離を反射的に判断する点にある。それにより、この場合両者とも自分には必要のない人間と結果的に判断されたと言える。勿論その基準は個人差や後天的要因はあれど、人間が健全に生きて行く上での人と接するために必要不可欠な技術であると考える。

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そこになにを置くべきか
一筋の赤を置くと、暗闇に差し込む光となる
空色を散らしてみると、日陰にたまる水たまりとなる
そこになにを置いたらいいだろう
ここは暗い暗い翠の土地
海ならば、水面を揺らしてみる
沼ならば、蓮を植えてやろう
そこになにを置いたらいい
ここは、時々うねりをみせる土地
そうか、そこはなにもない
わたしは、そこをナイフで削り取り
漆黒の黒を塗り付けた

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プラットフォームには、発車までまだ随分時間があるのに、列車を待つ人が、日陰を避け陽射しの側に幾組か立っていた。風は冷たいが、晴れ渡って紫の膨らみ始めた季節の色の層を通して、山々の残雪が淡く正面に広く眺められた。小旅行の格好の夫婦の向こうに見え隠れする女性たちの弾ける笑い声が真上へ抜けると、潮が引いた後のような腐食の色彩のレールと砂利が、真下へ向かって静まりかえった。座布団を脇に抱えた交代の運転手が列車点検のほうからゆっくりとこちらへ歩いてくる。

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逆流する橋幸夫のメロディー
青い蒙古斑のあたりをけっとばされて
まぶたをこすりながら
おれは立ちいでた
はりついた血液がとけて頭蓋に灯がともるころ
かすかに見えた
のたうつ日本列島の背骨
正倉院の御物が下半身を腐らせにらみつけている
むき出しの魂が抒情の河原で昼寝をしている

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肉体の一点から詩が入ってきて、私は誕生した。色は真紅とでもいっておこう。獣眼が覗きこむ修羅。私は通行されるものである。産道から歩きだして、全く途方もない宇宙の駅に立ったものだ。
太陽は赤道植物園に堕落した。「白人の裸体」という種族が住んでいる、獣眼のもっとも淀んだ場所で、産婆が洗面器を洗っていた。

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