プラットフォームには
プラットフォームには、発車までまだ随分時間があるのに、列車を待つ人が、日陰を避け陽射しの側に幾組か立っていた。風は冷たいが、晴れ渡って紫の膨らみ始めた季節の色の層を通して、山々の残雪が淡く正面に広く眺められた。小旅行の格好の夫婦の向こうに見え隠れする女性たちの弾ける笑い声が真上へ抜けると、潮が引いた後のような腐食の色彩のレールと砂利が、真下へ向かって静まりかえった。座布団を脇に抱えた交代の運転手が列車点検のほうからゆっくりとこちらへ歩いてくる。
text by tetsuya machida