— times

想像の世界で物を動かすには、現実の世界と同様、動かす距離に応じた時間がかかる。動かす距離を何らかの方法で縮められれば、想像が早く容易にできる。
想像で声を聴いたり、物を見たりすることは誰でも自由にできる。実際には存在しない声が聞こえることや、存在しないものが見えること自体は特に問題とは言えない。問題となるのは、それを抑えることができない場合だけである。
外からは見えないティーポットの中がどうなっているのかを想像すれば、視覚野が活性化する。幻聴に悩まされている総合失調症患者の脳を脳走査装置で調べてみると、患者が「誰かが話しているのが聞こえる」という時には、実際に人の言葉を聴くときに働く脳の部位が活性化していることがわかる。つまり、患者はウソを言っているのではなく、本当に声が聞こえているのである。

Read More

奥行きを認識する際には、様々な「手掛かり」が利用される。手掛かりは多数あるが、通常は複数を同時に利用している。

Read More

目が醒めると、記憶を振り返れないほど長い眠りだったかと、暫くは雨音に気付かず耳鳴りへ気持ちが傾き、首の後ろ側に残る痺れを殊更大袈裟に庇う手つきが、浅ましいと感じた。
傍らの女の首の微かな青い脈動を眺め、先ほどまでこちらを見詰めていたのではと考えた。

Read More

目の視界の中で解像度が高いのはごく一部に過ぎない。残りの部分は解像度がかなり低く、色を認知することすらままならない。しかし我々が普段それに気づくことはまずありえない。
目の解像度は、目の裏側にある網膜上の感光性細胞の密度によって決まる。(網膜は主に感光性細胞から成る細胞の層だが、視覚信号を集め、処理して脳に伝達役割を持った細胞の層もある)。もし、感光性細胞が均一に分布していれば、真正面にあるものでも、目の端で捕らえなくてはならない位置にあるものでも、同様に良く見えるはずである。しかし、最高の解像度で見られる範囲は、たとえば夜空を見上げたときにちょうど満月をカバーできるくらいのものである。満月を見た場合には、それ以外のものははるかに低い解像度でしかとらえられない。

Read More

ぼくがフリオの歌を好んで聴くようになったのは、学生の頃つきあっていた彼女から誕生日のプレゼントとしてフリオのベスト・アルバムCDを貰ったことがきっかけだ。彼女は、
「この歌手はあなたと同じ誕生日なのよ」といって、小さなポリエチレン製の手提げ袋に入ったCDをぼくにくれた。

Read More

斜線を引く。
斜線を引く。
斜線を引く。
斜線を引くという行為について考える。
遠い。
遮断機があがる。

Read More

僕たちは9ヶ月一緒にいて、そのあとはもう一緒ではなくなった。

Read More