— times

想像の世界

想像の世界で物を動かすには、現実の世界と同様、動かす距離に応じた時間がかかる。動かす距離を何らかの方法で縮められれば、想像が早く容易にできる。
想像で声を聴いたり、物を見たりすることは誰でも自由にできる。実際には存在しない声が聞こえることや、存在しないものが見えること自体は特に問題とは言えない。問題となるのは、それを抑えることができない場合だけである。
外からは見えないティーポットの中がどうなっているのかを想像すれば、視覚野が活性化する。幻聴に悩まされている総合失調症患者の脳を脳走査装置で調べてみると、患者が「誰かが話しているのが聞こえる」という時には、実際に人の言葉を聴くときに働く脳の部位が活性化していることがわかる。つまり、患者はウソを言っているのではなく、本当に声が聞こえているのである。


text by hiroshi takenouchi