— times

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machidatetsuya

彼女の家はスイス風だった。そいつは当時の夢だった。家の前には魚どもが、くさい匂いのする池につかって泳いでいた。もう少し行くと玄関の石段があった。ぼくたちは暗闇を分けるようにして中に入った。何か柔らかいものに触った。(そばへおいで、フェルディナン坊や、こわがらなくてもいいんだよ・・・・・・)キスしに来いと言うんだ。逃げるわけにもいかなかった。

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「あの時はまるで自分の家が火事だってのに、それを見ながら美味しいものを強請っているっていう感じだったね」
「・・・憶い出したわ」
「言い訳ばかりのひどい手紙だった」
「それでいいのよ」
強い陽射しの向こうで、もの凄い勢いで走ってきた男が転んで、君は笑った。

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「日本を出て以来ニューヨークを経てパリに来たわけだけど、不思議なことにどの都市でもちょうど写真が活発な時期にあたっていたんだ。その意味でニューヨークでリゼット・モデルに出会ったことや、パリでジャン=クロード・ルマニーに評価されたことは幸運でもあったし自分の写真にとって重要なことだった。面白いのは写真について吸収したことというのは、僕の場合しばらくたってから出てくるということだね。日本で勉強したことはアメリカに行ってから、ニューヨークで吸収したことはパリに来てから出て来る」

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だが、確かに写真が文字通り「網膜に焼きつけられる」ような印象を残すのに対して、TV映像のイメージには液体的なところがある。

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バルトを好きなのは、彼が自分が見たいものを見て、その根拠を喜びをもって説明するからだ。・・・・・・・・しかし私を驚かすのは、彼が写真家のいかなる意図にも興味を抱かないという、その拒否である。まるでバルトは写真が何かまったくのアクシデントか、偶然見つけられたオブジェであるとでも考えているようだ。

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目が醒めると、記憶を振り返れないほど長い眠りだったかと、暫くは雨音に気付かず耳鳴りへ気持ちが傾き、首の後ろ側に残る痺れを殊更大袈裟に庇う手つきが、浅ましいと感じた。
傍らの女の首の微かな青い脈動を眺め、先ほどまでこちらを見詰めていたのではと考えた。

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ぼくがフリオの歌を好んで聴くようになったのは、学生の頃つきあっていた彼女から誕生日のプレゼントとしてフリオのベスト・アルバムCDを貰ったことがきっかけだ。彼女は、
「この歌手はあなたと同じ誕生日なのよ」といって、小さなポリエチレン製の手提げ袋に入ったCDをぼくにくれた。

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