— times

秘密基地は消えた

秘密基地は消えた。漫画もお菓子もカードダスも段ボールの机も延長コードもショベルカーも土の山も全て。始めから何も無かったのだ、とでも言うように何も残されずに平らになっていた。秘密基地のあった場所に立ってみると、何も無かったのだろうと思った。昨日と今日の間の永遠なんて無かったのだと。町中に流れ始めた帰宅時刻を知らせる放送に、僕は腰の高さまで伸びた雑草の生えた土手を登り始める。


text by genta maruyama