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「見覚えがある」という感覚

「見覚えがある」という感覚は、脳が捏造している。
周囲の環境から絶えずもたらされる情報の量は、脳の記憶容量をはるかに上回っているため、どうしても、様々な手段で取捨選択をしなくてはならない。記憶のおかげで、我々は皆、以前に見たものや会った事のある人を、「知っている」と感じることができる。この感覚は何かが見える、聞こえるといったことと差がないように思えるが、現実にはまったくそうではない。「見覚えがある」という感覚は、脳の隠された機能によって「捏造」されたものだ。これはプライミングも関係している。
意味が良くわからない、あるいは意図的に理解しづらい文章なども、同様に、「何か」として理解できるときもある。そもそも認識や理解の方法自体が個別の脳によって、個別に捏造されるものであるならば、意味がある、意味がない、わかりやすい、わかりにくいなどの対比はそれほど重要ではない。


text by hiroshi takenouchi