— times

簡単に忘れてしまうと

簡単に忘れてしまうと思っていました。忘れる努力もしました。でも、時間が過ぎれば過ぎるほど、抹香のような黒い結晶がカラダの中につくられていくのですね。これは、あの忌まわしい一瞬よりも始末が悪い。日を過ごす度に取り返しのつかないカラダになっていく。
午後の陽射しの下の、柔らかい街の景色を微睡んで眺めることもできない。
秘密など持つものではありませんね。


text by tetsuya machida