目をつぶると
目をつぶると、私の前にひろがるのは戦前の東京だ。市電が走っている。伝染にポールがふれてスパークし、ぱちぱちと青白い火花が散っている。また目をつぶる。すると今度は戦後の東京だ。見わたす限り焼け野原で、銀座から浅草の松屋が見える。浮浪児とパンパンが街を行く。また目をつぶる。すると今度は現在の東京だ。まぼろしのように高層ビルが立っている。
都心ノ病院ニテ幻影ヲ見タルコト/澁澤龍彦
目をつぶると、私の前にひろがるのは戦前の東京だ。市電が走っている。伝染にポールがふれてスパークし、ぱちぱちと青白い火花が散っている。また目をつぶる。すると今度は戦後の東京だ。見わたす限り焼け野原で、銀座から浅草の松屋が見える。浮浪児とパンパンが街を行く。また目をつぶる。すると今度は現在の東京だ。まぼろしのように高層ビルが立っている。
都心ノ病院ニテ幻影ヲ見タルコト/澁澤龍彦