— times

樹木の濃密な香りを吸い、輪郭が膨張する瑞々しい季節の色に瞼を薄くさせながら、腰迄の笹を掻き分けるように歩んでいった。笹の葉で腕を幾筋か切り裂き、薄い血を意識の外で舐めて進んでいた。
胸の上下も汗の滴も自らの呼吸も、別物の動きと喘ぎに聴こえ、獰猛で闇雲な欲情が骨の芯辺りから垂直に流れ、このモノに宿るような気分となった。