— times

テーブル

オープンカフェのテーブルに座り、所在なくぼんやりと路行く人を眺めていた。
こちらは椅子の中の影のようだったのだろうか、同じテーブルに女が誰もいない席に座るように、ため息まじりに腰を下ろし、バッグを横の椅子に置いてから、
「あら、こちらいいかしら」
と、はじめて人に気づいたような台詞を投げて寄越した。
頷いてから、女の口から面倒な言葉が続いたら立ち上がろうとこの時決めたが、細い煙草を燻らせこちらに横顔を向けたまま、睫毛を下ろし人々の歩行のはじまる路の入り口あたりを、遠く眺めるので、あたりは更に停止したように消音し静まっていった。